発酵性食物繊維ってなに?腸内細菌との関係や注目される理由を解説
「発酵性食物繊維」という言葉を、最近目にする機会が増えたと感じている方もいるかもしれません。
発酵性食物繊維とは、食物繊維のなかでも、腸内細菌のエサになり、発酵されやすい性質をもつ食物繊維です。
名前は少し新しく感じるかもしれませんが、「発酵性食物繊維」そのものは最近生まれた成分ではなく、これまで私たちが食べてきた穀類や豆類、野菜、果物など、身近な食品に含まれています。
近年は腸内細菌の研究が進み、食物繊維を「どれくらいとるか」だけでなく、大腸で腸内細菌にどのように利用されるかという「発酵性」から捉える考え方に関心が集まっています。 このコラムでは、「水溶性食物繊維・不溶性食物繊維」との違いや、腸内細菌に利用されるしくみを解説します。
目次
1.「発酵性食物繊維」とは?
大腸に届いたあとに腸内細菌によって分解・利用され、発酵されやすい性質を持つ食物繊維のことです。
名前に「発酵」とありますが、納豆やヨーグルトなどの発酵食品とは意味が異なり、
- 発酵食品:微生物の働きを利用して、食品そのものを発酵させたもの
- 発酵性食物繊維:腸内細菌に利用されて発酵する性質をもつ食物繊維
発酵食品のように、発酵性食物繊維そのものが発酵しているのではなく、食べたあとに大腸の中で腸内細菌のエサになり、分解・発酵が起こるのが特徴です。
ひとつの成分の名前ではなく、発酵されやすい性質をもつ食物繊維の総称として呼ばれています。
発酵性食物繊維には、β-グルカン、イヌリン、ペクチン、アラビノキシラン、レジスタントスターチなど、さまざまな種類があります。
2.「水溶性」「不溶性」となにが違う?
食物繊維には、水に溶けやすい「水溶性食物繊維」と、水に溶けにくい「不溶性食物繊維」があります。
一方で「発酵性食物繊維」は、食物繊維を腸内細菌による分解発酵のされやすさから捉える考え方です。
- 水溶性・不溶性:水への溶けやすさから見る
- 発酵性:腸内細菌による発酵のされやすさから見る
という違いがあります。
発酵性食物繊維は「水溶性・不溶性」に続く別の食物繊維ではなく、同じ食物繊維を、これまでとは違う角度から見ていると考えるとわかりやすいでしょう。
水溶性食物繊維には「発酵性」のものが多いといわれていますが、不溶性食物繊維のなかにも腸内細菌に利用されるものもあります。
そのため、「水溶性だから発酵性」「不溶性だから発酵しない」と単純に分けることはできません。
水溶性・不溶性食物繊維の特徴や、食物繊維を含む食品についてはこちらで詳しく紹介しています。
3. 発酵性食物繊維は腸内細菌にどう利用される?
私たちが食べた食物繊維は、小腸で消化されずに大腸まで届きます。
そのなかでも「発酵性食物繊維」は、大腸にいる腸内細菌のエサになることで分解・利用されます。この一連の過程が「発酵」です。
腸内細菌に利用されると「短鎖脂肪酸」がつくられる
この発酵の過程で短鎖脂肪酸などがつくられることが大きな特徴です。
代表的なものには、酢酸、プロピオン酸、酪酸などがあり、大腸内の環境に関わる物質として知られています。
腸だけでなく、全身の健康との関係も研究されている
これまで食物繊維は、便のかさを増やしたり、便の水分を保ったりする働きがよく知られてきました。近年は腸内細菌の研究が進み、食物繊維が大腸に届いたあとに何が起こるのかにも関心が集まっています。
なかでも、腸の中の「発酵」によってつくられる短鎖脂肪酸については、大腸内の環境だけでなく、体のさまざまな働きとの関係についても研究が進められています。
とはいえ、発酵性食物繊維をとれば、誰にでも同じ変化が起こるわけではありません。
腸内細菌の種類やバランスは人によって異なり、食物繊維の種類によっても発酵のされ方は変わります。 食物繊維を「どれくらいとるか」だけでなく、大腸で腸内細菌にどう利用され、その先で何がつくられるのかまで見るようになってきたことが、発酵性食物繊維が注目されている背景のひとつです。
腸内細菌たちが住む「腸内フローラ」の個人差について、くわしくはこちらの記事をご覧ください。
4. 発酵性食物繊維はどんな食品に含まれている?
発酵性食物繊維は、普段の食事で口にしている身近な食品にも含まれています。
代表的なものには、次のような種類があります。
- β-グルカン:もち麦・押麦など
- イヌリン:ごぼう、玉ねぎなど
- ペクチン:キウイ、りんご、バナナなどの果物
- アラビノキシラン:玄米、小麦などの穀類
- レジスタントスターチ:未熟なバナナ、冷ましたごはん・いも類など
このように、発酵性食物繊維にはさまざまな種類があり、含まれる食品もそれぞれ異なります。 特定の食品だけに偏るのではなく、穀類や野菜、果物など、いろいろな食品から発酵性食物繊維を取り入れることを意識してみるのもひとつです。
冷ますと増える?「レジスタントスターチ」に注目
ごはんや麺、いも類などのでんぷん質の食品は、加熱したあとに冷ますことで、でんぷんの一部が「レジスタントスターチ」に変わることがあります。レジスタントスターチは小腸で消化・吸収されにくく、大腸まで届いて腸内細菌に利用されるでんぷんの一種です。
加熱でやわらかくなったでんぷんは、冷める過程で一部がぎゅっと並び直し、消化酵素の影響を受けにくい形になります。
身近なところでは、おにぎりもそのひとつ。
さらに、もち麦入りのおにぎりなら、もち麦に含まれるβ-グルカンも一緒にとることができます。
ただし、レジスタントスターチの増え方は、食品の種類やでんぷんの性質、冷却時間・温度などによって異なります。同じ食品でも、調理や食べ方によって大腸まで届く成分が変わることがあるのも興味深いところです。
参考
・日本調理科学会「レジスタントスターチは冷ますと増えてレンジで減らない」
・Frontiers in Nutrition「Harnessing the power of resistant starch: a narrative review of its health impact and processing challenges」
5. まとめ|「発酵性」を見ると、身近な食材が少し違って見える
発酵性食物繊維は、新しく生まれた成分ではありません。
これまで食べてきた食物繊維のなかに、大腸で腸内細菌に利用され、発酵されやすいものがあり、それを「発酵性」という視点から捉えています。
水溶性・不溶性だけでなく、食物繊維が大腸まで届いたあとにどうなるのかを知ることで、これまで何気なく食べていた食事も、少し違った角度から意識できるようになります。
まずは毎日の食事のなかにある発酵性食物繊維に目を向けてみる。
そこから、無理なく食材の選び方を広げていきましょう。
発酵性食物繊維を取り入れるなど食生活を見直していても、便秘に悩むことはあります。
便秘への対処法のひとつとして、市販の便秘薬について知っておくのもよいでしょう。
また、服用する際は、用法・用量を守り、不安なことや気になることがある場合は、医師、薬剤師または登録販売者に相談しましょう。
このコラムをシェアする